2014年度 私立医学部入試動向

私立医学部受験者1万人増

模擬試験の志望校分析では高い人気を見せていた国公立大学医学部も一般入試で「センター試験の難化」という現実を突きつけられた結果、志願者は減少した。しかし、私立大学医学部の一般入試の志願者増は止まらず、前年の80,142人から一気に91,701人へと1万人を超える11,559(14.4%)も志願者を増加させた。4年前の2009年度入試では、私立大学医学部一般入試の志願者は71,227人であったから、3千人に満たない私立大学医学部の募集人員に対し、なんと4年で2万人以上志願者が増えたことになる。繰り返すが4年間で増えた志願者だけで2万人を超える(増加分だけで倍率7.45倍)という他学部では考えられない状況を呈している。特に2013年度の1年だけで1万人以上も志願者を増加させたことには驚きを禁じ得ない。

センター試験利用入試の導入、後期日程や地方会場の新設も志願者増の後押しをしたことは間違いないが、これだけでは私立大学医学部の大幅な志願者増の説明としては足りないであろう。結局のところは受験生の間で、医師という仕事に対する関心が高まっている、言い換えれば「医師になりたい」と考えている受験生が増えているということに尽きるであろう。

推薦・AO・編入動向

私立大学医学部の2013年度入試について少し細かく見ていこう。まず推薦入試だが、公募と指定校を合わせて志願者は2,361人で前年を107人(4.7%)上回った。推薦入試の募集人員を5人増とした東京医科大学では志願者が16人(22.2%)増加し、同じく募集人員を5名増やした近畿大学でも56人(9.3%)の志願者増となった。一方、推薦入試の募集人員を5人減とし更に受験資格を「2浪まで」から「1浪まで」に変更した藤田保健衛生大学(高校推薦)では32人減(13.2%減)となった。

大学入試の中でも別格の厳しさを見せる私立医学部入試であるが、推薦入試は受験資格が定められており、医学部を志望する誰もが受験できるわけではない「現役生」など限られた受験生しか受験できない試験であるから、厳しいとはいえ、一般入試に比べればチャンは大きいと言える。自分が受験資格を満たしている大学があるのであれば、推薦入試について一度は真剣に検討してもらいたい。推薦入試の試験内容については大学によって様々である。東京女子医科大学の適性試験や聖マリアンナ医科大学の講義理解力テストなどの様に普段、高校では扱わない問題が出題される場合は事前に特別な準備が欠かせないだろうが、岩手医科大学や近畿大学の様に一般入試に向けての勉強でカバーできる大学や東京医科大学や福岡大学のように少しの推薦入試対策で構わない大学もある。推薦入試の受験資格があるのであれば、試験内容も含めて受験すべきかどうか一度は考えてもらいたい。その際には久留米大学の様に地域枠ではあるものの出身地域の制限はない大学もあることにも注意してもらいたい。

次にAO入試だが、大学中退、休学者は受験資格を失うことになった濁協医科大学は4人と僅かではあるが志願者減となった。変更のなかった金沢医科大学では志願者が7人増加となった。AO入試は学力だけでなく受験生本人を十分見て合否を決める試験である。それだけに金沢医科大学なら試験官が満足する出願書類をどう書くか、濁協医科大学ならワークショップでどうアピールするかが大きなポイントとなる。

最後に編入学試験であるが、編入学試験を行う5大学全体で志願者は687人と前年を38人(5.2%)下回った。これは岩手医科大学の編入学試験では医学部で学ぶ専門知識も必要なことが広まった、東海大学で前年、募集人員を10名減らしたことなどが要因であろう。

センター試験利用入試も志願者増

2013年度入試では埼玉医科大学(募集人員10人)、東海大学(神奈川県地域枠、募集人員3人)、関西医科大学(募集人員15人)の3大学が新たにセンター試験利用入試を導入した。2002年度入試で濁協医科大学がセンター試験利用入試を新たに取り入れ私立医学部で5大学がセンター試験利用入試を実施することになって以来、私立医学部でのセンター試験利用入試の導入が進み、2013年度入試では半数を超える15大学がセンター試験利用入試を実施するまでになった。

大学別に志願者の増減を見てみると、センター試験利用入試を行なう15大学の中で志願者が減少したのは藤田保健衛生大学1校のみであり私立医学部センター試験利用入試全体の志願者は前年から3,316人(26.8%)増え15,709人となった。国公立大学医学部がセンター試験の難化を受け志願者を減少させたのとは全く逆の動きであった。これは、国公立大学の出願がセンター試験後に行われるのに対し私立医学部ではセンター試験を受験する前に出願を締め切ることによる。私立医学部のセンター試験利用入試は出願締め切りが早いためセンター試験の結果には左右されない。ただし一般入試の出願は、センター試験の結果を見てからでも間に合う大学もある。こういった大学ではセンター試験の結果が志願者数に影響する場合もある。

さて唯一、センター試験利用入試の志願者を減らした藤田保健衛生大学であるが、これはセンター試験利用入試の募集人員を10名から5人に半減させたことによる。これまでも見てきたように、受験生は募集人員の増減には敏感に反応する。細かく見ていくと順天堂大学のセンター試験利用入試の中でも東京都地域枠と近畿大学のセンター試験利用入試後期では志願者が減少している。この二つは、いずれも入試難易度のあまりの高さに受験生がたじろいだことが大きな原因と考えて良いだろう。志願者増の医学部が多い中、その中でも目立ったのは昭和大学である。昭和大学医学部のセンター試験利用入試は現役生のみが受験でき地域別に募集する試験であるが、2013年度入試では募集人員10人に対し、志願者が136人上昇した。現役生しか受験できない試験で志願者が前年を136人(38.3%)上回った。これは何と言っても学費の値下げの影響が大きい。昭和大学では学費を大幅に低減し、このセンター試験利用入試で合格すると6年間の学費は私立医学部で2000万円を下回る1900万円になる。私立医学部で最も低い学費に受験生が反応した。私立医学部は順天堂大学が思い切って学費を下げて以来、学費の値下げが続いており、受験生は学費の低減幅が大きいと大きく反応する。今後も私立医学部の学費改定は続くであろうから志願者数の動きと絡めて注意が必要だ。

さて、センター試験利用入試はセンター試験さえ受験しておけば改めて1次試験を受験する必要がなく2次試験を受けるのみである。近畿大学のように2次試験のない大学もある。しかし、だからと言って安易に考えるのは慎んだ方がいい。私立大学医学部センター試験利用入試のボーダーラインは募集人員が少ないこともあって得点率90%程度である。募集人員2名の近畿大学中期に至っては東京大学理科Ⅲ類を超える程である。センター試験利用入試に過度な期待は禁物である。

一般方式で志願者8千人増

さて、通常の一般入試(一般方式)の結果を見ていこう。センター試験利用入試の項でも触れたが
一般方式でも学費の大幅な低減を行った昭和大学がセンター試験利用入試だけでなく、一般Ⅰ期、Ⅱ期ともに志願者を大きく増やした。昭和大学の学費は6年間で450万円が減額された上に、Ⅰ期入試の正規合格者に対しては更に初年度授業料300万円を免除することにした。これにより昭和大学Ⅰ期の正規合格者の学費は私立医学部で初めて2000万円を下回り、1900万円になった。これだけ大きな学費の減額には受験生も大きく反応した。募集人員78名のⅠ期では前年を709人(26.2%)上回る3,414人の志願者を集め、募集人員20名のⅡ期でも前年を579人(37.0%)上回り志願者は2,145人となった。ちなみにⅠ期入試では予定していた試験会場では受験生を収容しきれず急遽、試験会場を追加することになった。Ⅰ期、Ⅱ期を合わせると昭和大学だけで志願者数を1,288人も押し上げたことになる。これだけ思い切った学費の減額があったことを考えると昭和大学医学部で増えた志願者のうち、少なくない人数が国公立大学との併願者であると考えていいだろう。Ⅰ期入試の繰り上げ合格者は202人と多く、それだけ入学辞退者が多かったということでもある。入学辞退者が多いということは、昭和大学よりもっと行きたい大学に合格した受験者が多いということで成績上位層が増えたと考えていいだろう。昭和大学医学部は今後もセンター試験利用入試、通常の一般入試ともに人気を集めると考えられる。

6年間の学費を600万円下げた東邦大学も志願者は前年を404人(17.8%)上回り2,674人の志願者を集めた。東邦大学の面接は、これまで個人面接だけであったが、新たにグループ討論も行った。通常、受験生は負担が増えると尻込みをするものだが、東邦大学では学費減額の影響の方が大きく志願者増につながった。東邦大学は愛知医科大学と並んで私学医学部一般入試の最初の1次試験日であった。初日の東邦大学が志願者を集めたことから翌日以降の志願者動向にも影響を与えたと考えられる。

募集人員15名でのセンター試験利用入試の新規実施に伴い一般方式の募集人員が15名減った関西医科大学は、募集人員の変更だけでなく初年度納入金を300万円減額(6年間の学費は200万円の減額)し、新たに東京試験会場も新設した。通常、募集人員が減ると志願者も減少するものだが、関西医科大学は学費の減額と東京試験会場の新設、更に新キャンパスが完成したこともあって73人の志願者増を達成した。関西医科大学は来年度入試から後期日程も設けるなど矢継ぎ早に入試改革を押し進めている。今後の動向には要注目である。

これまで見てきたように学費の低減は志願者の動向にも影響を与える。特に減額幅が大きいと志願者も大きく動く。学費の低減があった際には志願者数がどの程度動くのか綿密な予想が欠かせない。
日本大学は前年から志願者を768人(22.8%)増加させ、4,132人の志願者を集めた。1次試験日が一日だけの大学で志願者が4千人を超えるということは、これまでなかったことだ。ちなみに募集人員は102名であるから志願倍率は40.5倍になった。日本大学がこれだけの志願者を集めたのは天野医師の影響もあるかもしれないが何と言っても「センター試験の難化」の影響である。センター試験を終えて、それからでも出願が間に合う大学として多くの受験生が日本大学を考えたと思われる。大阪医科大学(後期)の志願者増も同じ理由と考えていいだろう。

新たに募集人員25名で後期日程を実施した藤田保健衛生大学は募集人員60名の前期日程の志願者を336人上回る1,905人の志願者を後期日程で集めた。前期定員の半数以下の定員にもかかわらず、後期入試の志願者は前期を上回った。後期日程の1次試験合格者は418人であったがこれは募集人員が2倍以上の前期日程の1次試験合格者数を上回る人数であった。結局、後期日程の最終合格者は繰り上げ合格者も含めて27人と少なく1次合格者の中に割り切れない思いを抱いた受験生も少なくなかったようだ。

志願者が1,400人増となった東海大学は、1次試験の2日目が他大学と重複せず単独での試験となったことが大きな要因である。

2014年度入試のポイント

学費の減額を行う大学が毎年続いているが、2014年度入試では埼玉医科大学が初年度納入金を225万円下げる。6年間の学費では100万円の減額となる。それほど大きな減額ではないので受験生の反応も大きなものにはならないと思われる。しかし、帝京大学は6年間の学費を一気に約1,170万円減額する。これまで帝京大学は、私立医学部の中で最も学費の高い大学であり、それも他大学に比べかなり高額に感じる学費であったが、受験生がどう反応するのか慎重な見極めが欠かせない。帝京大学の志願動向を考える際、忘れてはならないのは試験日程である。帝京大学は2次試験を行わないので1次試験日だけを考えればいい。昨年は東京慈恵会医科大学と福岡大学と試験日が重なっていたが来年入試では、この2校に加え日本医科大学、東海大学と試験日が重なる。学費の値下げと試験日の重複のどちらを重く考えるかだが、学費の値下げの影響の方が大きいのではないかと考えられる。日本医科大学とは、それ程受験者層が重ならないと考えられる。東海大学は試験日が2日間ある。このことを考えると来年入試の帝京大学は、学費低減により若干、志願者は考えていいだろう。同時に、成績上位層も増えるであろう。学費の減額とは異なるが、東京女子医科大学では一般入試の成績上位10名に対し初年度納入金のうち780万円を免除することにした。特待生となると東邦大学より低い学費となる。10名と少ないが成績上位層が増える可能性は十分あるだろう。

募集人員の変更もいくつかの大学で行なわれる。東海大学では編入学試験の募集人員を10名減として一般入試の募集人員を10名増として70名にする。同時に、これまで一般入試では東海大学だけが行ってきた適性試験の廃止も行う。募集人員が増えるだけでなく、これまで受験生の負担となっていた適性試験も廃止されることで志願者はかなり増加すると考えていいと思うかもしれないが、そう単純ではない。先の帝京大学のケースと同じように入試日程も考えなければならない。先にも触れたが東海大学が志願者を一気に1,400人も増加させたのは、2日間ある試験日で重複したのが東京医科大学だけだったことが大きい。ところが来年入試では日本医科大学、帝京大学、福岡大学と試験日が重なる。志願者は横バイか若干の減少と考えていいだろう。大阪医科大学、関西医科大学の関西の2大学では一般前期、福岡大学では一般の募集人員がそれぞれ5名減少する。5名の定員はセンター試験利用入試または後期日程に振り向けられる。募集人員減には受験生は敏感に反応する傾向があるので、この3大学の一般前期または一般では多少の志願者減となることが考えられる。

その福岡大学では、募集人員10名で新たにセンター試験利用入試が実施される。センター試験で使用される科目は英語(リスニングは含まない)、数学ⅠA、数学ⅡB、理科2科目、国語(近代以降)である。地歴公民は使用されず700点満点で行われる。特に九州の国公立医学部志望者を含む医学部志望者全体から人気を集めると思われる。また、大阪医科大学では募集人員5名でセンター試験利用入試の後期を実施する。後期日程で募集人員5名となればハイレベルの戦いが予想される。これに伴い近畿大学のセンター試験利用入試(後期)は若干ボーダーラインが下がることがあるかもしれない。

順天堂大学では英語重視の姿勢を明確に打ち出すことになった。もともと英語の配点が高かった一般に加え、センター試験利用入試、センター・一般独自併用試験でも英語の配点を高くし英語重視の姿勢が鮮明になった。このことに受験生がどう反応するかは未知数でではあるが、それ以上に注目したいのは順天堂大学の1次試験日である。私立医学部一般入試が始まって3日目という点は前年と変わりないが、東邦大学と杏林大学の1次試験日が遅くなったことにより関東の医学部では最も早い1次試験日となった。このことを含め入試日程の変化が少なくなく、実際にどこの大学を受験するのかという受験校の選定にはきちんと時間をかけて後悔しない受験校選びを行ってもらいたい。

入試日程上の注意点を挙げておこう。まず初日の愛知医科大学であるが、化学の出題ミスに伴う採点のやり直しで合格者が19人追加され来年4月の入学が許可された。この19人分の合格者は2014年度入試の合格とはしないことが明らかになった。他大学と試験日の重複がなく、志願者増となりそうだ。翌日は岩手医科大学と兵庫医科大学が重なっているが、前年は更に杏林大学も同一試験日であった。杏林大学が抜けたことで特に岩手医科大学の志願者は増えると予想される。東京医科大学と久留米大学の試験日が重なったが、東日本の受験生は東京医科大学を受験するケースが多いであろう。特に成績上位者が東京医科大学を受験することで久留米大学にも影響が出るかもしれない。2日目が3校と重なった東海大学は合否を素点でなく偏差値で判定する。東海大学を受験するのであれば、2日目は必ず受験しておきたい。

(出典 MELURIX)

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