2014年度 国公立入試動向【総論】

2013年12月10日

高校卒業者3年ぶりの増加

通信教育のみを行う大学を除くと現在、国内に大学は国立86校、公立90校、私立606校の合計782校ある。近年は私立大学の定員割れも話題になる中、2013年4月の大学入学者数は前年を8,792人上回る614,182人であった。(文部科学省基本調査速報)これにより、いわゆる定員割れの大学も32校減少したが、それでも232校が定員割れとなっている。(私立学校振興共済事業団)大学入学者のうち高等学校卒業と同時に大学へ進学した者は2000年代に入って最も多い514,887人であった。これは高校卒業者数がここ5年で最も多かったことが大きな要因である。

大学入学者の「出身高校の所在地県」と「入学した大学の所在地県」との関係を見ると「自県内の大学へ入学したもの」の比率は42.3%で、受験生の地元志向が見て取れる。大学受験生の「進学できる大学に行く」安全志向に加え、地元志向の強まりを感じる。

センター試験は大幅難化

2013年度の大学入試センター試験(以下、センター試験)の志願者は前年を17,807人上回り7年ぶりに57万人を超える志願者を集めた。センター試験の志願者のうち現役が占める割合(現役占有率)は80.2%と遂に80%を超えることとなった。現役生のセンター試験受験者が増える一方、既卒生はピーク時の半数程になっている。先にも述べたが、浪人をしないで行ける大学に行く「安全志向」がここからも読み取れる。

さて、試験結果だが、主要科目の数学ⅠAと国語の平均点が大きく下がりその結果、総合点もダウンし受験生の慎重な出願につながった。まず数学ⅠAだが、前年に比べ平均点が18.8点も下がり、かろうじて50点を上回る平均点となった。国語は前年に比べ平均点が16.9点下がり、1990年のセンター試験開始以来最も低い平均点となった。もともと理系受験生の中には国語に苦手意識を持つ受験生も少なくなく、国語の結果にダメージを受けた受験生も少なくないだろう。さて理科だが化学Ⅰ、生物Ⅰ、物理Ⅰのいずれの科目も平均点がダウンした。国語と数学に加えて理科も平均点が下がり特に理系受験生にとっては厳しい試験結果となった。

国公立志願者2年連続減

前年、9千人減少した国公立大学一般入試の志願者だが、2013年度入試でも前年を5,141人(1.0%)下回る489,672人であった。(文部科学省 国公立大学入学選抜確定状況)センター試験の志願者が1万8千人増加したことを考えれば国公立大学の志願者も増えると考えて良さそうだが、現実は違った。前期日程は前年並みであったが、後期日程では7千人の志願者減であった。これはセンター試験が難しく、思ったような得点が挙げられなかった受験生が前期は国公立大学を受験しても、後期では合格は難しいと判断して出願しなかったということである。後期の欠席率が54.0%と過去最高であったことから考えると併願した私立大学に合格して、そこで受験を終えた学生が少なくなかったと言える。

後期日程は医学部や難関と言われる大学で募集を取り止めたり、縮小する動きが続いており2013年度でも募集人員は177名減少した。しかし、後期日程の合格者数は前年に比べ699名増加している。国公立大学の後期日程で合格しても私立大学に進学したり、再チャレンジを期して浪人する受験生が増えていると考えられる。

学部系統別では法科大学院の苦戦が続く法学系統の減少が止まず、減少幅も大きい。医療系統では歯学部と薬学部が志願者を伸した。センター試験の難化で本来は医学部志望だった受験生が、歯学部や薬学部に志望変更したケースが少なくなかったようだ。

さて、国公立大学医学部について少し詳しく見ていこう。医師不足対策として医学部の入学定員は2008年度入試から増加を続け、国公立大学では6年間で992名の定員増が行われた。医学部定員の増加が受験生の間に浸透するにつれ、医学部人気も急上昇してきた。そして2013年度入試に向けた各種模擬試験の志望動向から2013年度入試でも国公立大学医学部の志願者は増加すると予想されていた。しかし、実際の確定志願者を見ると前年を2,097人(6.1%)下回る結果となった。これは何と言ってもセンター試験の難化の影響が大きい。2013年度のセンター試験は特に理系受験生にとって厳しい結果となり、医学部を志望していた受験生の少なくない人数が志望学部を医学部から歯学部など他の学部に変更したと思われる。これに伴い志願倍率は前期日程で5.58倍から5.33倍へ、後期日程でも19.64倍から18.44倍へといずれもダウンした。

しかし、考えなければならないのは、入試の合否を決めるのは「何点取ったか」ではなく「上から何番だったか」だ。センター試験が難しくなれば、受験生全員が思ったように得点できていないはずである。自分だけが点をとれなかったと思う必要はない。冷静な判断をしてもらいたい。

志願者の変動の目立った大学を見てみると、いわゆる足切り条件が厳しくなった名古屋大学(前期)、福井大学(前期)、前期定員を43名減とした奈良県立医科大学が大きく志願者減となった。国公立大学は前後期ともに1校しか受けられないため志願者数が毎年変動する。出願には細心の注意が必要である。

私立大学志願者19万人増

2013年度入試における私立大学は入学定員が2,700人程増えたが、志願者、受験者、合格者、入学者も揃って増加した。このうち志願者は前年の320万人から339万人へと19万人(6%)の増加となった。また、定員割れの私立大学は32校減って232校であった。(日本私立学校振興・共済事業団)志願者増の要因としては、全学部入試などの受験生にとって受験しやすい試験方式の広がり、インターネット出願者に対する受験料の割引など私立各大学の受験生確保のための各種の努力の結果もあるだろうが、13年度入試では、センター試験の難化の影響が大きい。センター試験が難化したことで国公立大学専願を予定していた受験生が私立大学も併願することにしたり、国公私立を併願予定だった受験生が私立大学の受験校を増やしたりしたと見られる。私立大学一般入試の志願者を細かく見ると前期(Ⅰ期)の志願者は1割に満たない伸びだが後期(Ⅱ期)の志願者は2割程度の伸びと後期(Ⅱ期)の伸びが目立つ。これは、センター試験の結果を見て、受験生の出願がまだ間に合う後期(Ⅱ期)に出願したということだろう。

2014年度入試展望

2013年度入試で大きく難化したセンター試験は国語、数学ⅠAなどで揺り戻しがあるだろう。全体としても平均点は多少なりともアップすると考えていいだろう。国公立大学は岡山大学、九州大学の医学部で後期日程が廃止されるなど、ますます前期日程の重みが増すだろう。

そして、注目すべきは新課程入試以降の前年ということである。翌年から新課程入試になると考えれば、受験生が「ここで決めたい」という意識は強くなるだろう。全体として手堅い出願になる事が予想される。

(出典 MELURIX)

カテゴリー:医学部受験のツボ

2014年度 私立医学部入試動向

2013年11月18日

私立医学部受験者1万人増

模擬試験の志望校分析では高い人気を見せていた国公立大学医学部も一般入試で「センター試験の難化」という現実を突きつけられた結果、志願者は減少した。しかし、私立大学医学部の一般入試の志願者増は止まらず、前年の80,142人から一気に91,701人へと1万人を超える11,559(14.4%)も志願者を増加させた。4年前の2009年度入試では、私立大学医学部一般入試の志願者は71,227人であったから、3千人に満たない私立大学医学部の募集人員に対し、なんと4年で2万人以上志願者が増えたことになる。繰り返すが4年間で増えた志願者だけで2万人を超える(増加分だけで倍率7.45倍)という他学部では考えられない状況を呈している。特に2013年度の1年だけで1万人以上も志願者を増加させたことには驚きを禁じ得ない。

センター試験利用入試の導入、後期日程や地方会場の新設も志願者増の後押しをしたことは間違いないが、これだけでは私立大学医学部の大幅な志願者増の説明としては足りないであろう。結局のところは受験生の間で、医師という仕事に対する関心が高まっている、言い換えれば「医師になりたい」と考えている受験生が増えているということに尽きるであろう。

推薦・AO・編入動向

私立大学医学部の2013年度入試について少し細かく見ていこう。まず推薦入試だが、公募と指定校を合わせて志願者は2,361人で前年を107人(4.7%)上回った。推薦入試の募集人員を5人増とした東京医科大学では志願者が16人(22.2%)増加し、同じく募集人員を5名増やした近畿大学でも56人(9.3%)の志願者増となった。一方、推薦入試の募集人員を5人減とし更に受験資格を「2浪まで」から「1浪まで」に変更した藤田保健衛生大学(高校推薦)では32人減(13.2%減)となった。

大学入試の中でも別格の厳しさを見せる私立医学部入試であるが、推薦入試は受験資格が定められており、医学部を志望する誰もが受験できるわけではない「現役生」など限られた受験生しか受験できない試験であるから、厳しいとはいえ、一般入試に比べればチャンは大きいと言える。自分が受験資格を満たしている大学があるのであれば、推薦入試について一度は真剣に検討してもらいたい。推薦入試の試験内容については大学によって様々である。東京女子医科大学の適性試験や聖マリアンナ医科大学の講義理解力テストなどの様に普段、高校では扱わない問題が出題される場合は事前に特別な準備が欠かせないだろうが、岩手医科大学や近畿大学の様に一般入試に向けての勉強でカバーできる大学や東京医科大学や福岡大学のように少しの推薦入試対策で構わない大学もある。推薦入試の受験資格があるのであれば、試験内容も含めて受験すべきかどうか一度は考えてもらいたい。その際には久留米大学の様に地域枠ではあるものの出身地域の制限はない大学もあることにも注意してもらいたい。

次にAO入試だが、大学中退、休学者は受験資格を失うことになった濁協医科大学は4人と僅かではあるが志願者減となった。変更のなかった金沢医科大学では志願者が7人増加となった。AO入試は学力だけでなく受験生本人を十分見て合否を決める試験である。それだけに金沢医科大学なら試験官が満足する出願書類をどう書くか、濁協医科大学ならワークショップでどうアピールするかが大きなポイントとなる。

最後に編入学試験であるが、編入学試験を行う5大学全体で志願者は687人と前年を38人(5.2%)下回った。これは岩手医科大学の編入学試験では医学部で学ぶ専門知識も必要なことが広まった、東海大学で前年、募集人員を10名減らしたことなどが要因であろう。

センター試験利用入試も志願者増

2013年度入試では埼玉医科大学(募集人員10人)、東海大学(神奈川県地域枠、募集人員3人)、関西医科大学(募集人員15人)の3大学が新たにセンター試験利用入試を導入した。2002年度入試で濁協医科大学がセンター試験利用入試を新たに取り入れ私立医学部で5大学がセンター試験利用入試を実施することになって以来、私立医学部でのセンター試験利用入試の導入が進み、2013年度入試では半数を超える15大学がセンター試験利用入試を実施するまでになった。

大学別に志願者の増減を見てみると、センター試験利用入試を行なう15大学の中で志願者が減少したのは藤田保健衛生大学1校のみであり私立医学部センター試験利用入試全体の志願者は前年から3,316人(26.8%)増え15,709人となった。国公立大学医学部がセンター試験の難化を受け志願者を減少させたのとは全く逆の動きであった。これは、国公立大学の出願がセンター試験後に行われるのに対し私立医学部ではセンター試験を受験する前に出願を締め切ることによる。私立医学部のセンター試験利用入試は出願締め切りが早いためセンター試験の結果には左右されない。ただし一般入試の出願は、センター試験の結果を見てからでも間に合う大学もある。こういった大学ではセンター試験の結果が志願者数に影響する場合もある。

さて唯一、センター試験利用入試の志願者を減らした藤田保健衛生大学であるが、これはセンター試験利用入試の募集人員を10名から5人に半減させたことによる。これまでも見てきたように、受験生は募集人員の増減には敏感に反応する。細かく見ていくと順天堂大学のセンター試験利用入試の中でも東京都地域枠と近畿大学のセンター試験利用入試後期では志願者が減少している。この二つは、いずれも入試難易度のあまりの高さに受験生がたじろいだことが大きな原因と考えて良いだろう。志願者増の医学部が多い中、その中でも目立ったのは昭和大学である。昭和大学医学部のセンター試験利用入試は現役生のみが受験でき地域別に募集する試験であるが、2013年度入試では募集人員10人に対し、志願者が136人上昇した。現役生しか受験できない試験で志願者が前年を136人(38.3%)上回った。これは何と言っても学費の値下げの影響が大きい。昭和大学では学費を大幅に低減し、このセンター試験利用入試で合格すると6年間の学費は私立医学部で2000万円を下回る1900万円になる。私立医学部で最も低い学費に受験生が反応した。私立医学部は順天堂大学が思い切って学費を下げて以来、学費の値下げが続いており、受験生は学費の低減幅が大きいと大きく反応する。今後も私立医学部の学費改定は続くであろうから志願者数の動きと絡めて注意が必要だ。

さて、センター試験利用入試はセンター試験さえ受験しておけば改めて1次試験を受験する必要がなく2次試験を受けるのみである。近畿大学のように2次試験のない大学もある。しかし、だからと言って安易に考えるのは慎んだ方がいい。私立大学医学部センター試験利用入試のボーダーラインは募集人員が少ないこともあって得点率90%程度である。募集人員2名の近畿大学中期に至っては東京大学理科Ⅲ類を超える程である。センター試験利用入試に過度な期待は禁物である。

一般方式で志願者8千人増

さて、通常の一般入試(一般方式)の結果を見ていこう。センター試験利用入試の項でも触れたが
一般方式でも学費の大幅な低減を行った昭和大学がセンター試験利用入試だけでなく、一般Ⅰ期、Ⅱ期ともに志願者を大きく増やした。昭和大学の学費は6年間で450万円が減額された上に、Ⅰ期入試の正規合格者に対しては更に初年度授業料300万円を免除することにした。これにより昭和大学Ⅰ期の正規合格者の学費は私立医学部で初めて2000万円を下回り、1900万円になった。これだけ大きな学費の減額には受験生も大きく反応した。募集人員78名のⅠ期では前年を709人(26.2%)上回る3,414人の志願者を集め、募集人員20名のⅡ期でも前年を579人(37.0%)上回り志願者は2,145人となった。ちなみにⅠ期入試では予定していた試験会場では受験生を収容しきれず急遽、試験会場を追加することになった。Ⅰ期、Ⅱ期を合わせると昭和大学だけで志願者数を1,288人も押し上げたことになる。これだけ思い切った学費の減額があったことを考えると昭和大学医学部で増えた志願者のうち、少なくない人数が国公立大学との併願者であると考えていいだろう。Ⅰ期入試の繰り上げ合格者は202人と多く、それだけ入学辞退者が多かったということでもある。入学辞退者が多いということは、昭和大学よりもっと行きたい大学に合格した受験者が多いということで成績上位層が増えたと考えていいだろう。昭和大学医学部は今後もセンター試験利用入試、通常の一般入試ともに人気を集めると考えられる。

6年間の学費を600万円下げた東邦大学も志願者は前年を404人(17.8%)上回り2,674人の志願者を集めた。東邦大学の面接は、これまで個人面接だけであったが、新たにグループ討論も行った。通常、受験生は負担が増えると尻込みをするものだが、東邦大学では学費減額の影響の方が大きく志願者増につながった。東邦大学は愛知医科大学と並んで私学医学部一般入試の最初の1次試験日であった。初日の東邦大学が志願者を集めたことから翌日以降の志願者動向にも影響を与えたと考えられる。

募集人員15名でのセンター試験利用入試の新規実施に伴い一般方式の募集人員が15名減った関西医科大学は、募集人員の変更だけでなく初年度納入金を300万円減額(6年間の学費は200万円の減額)し、新たに東京試験会場も新設した。通常、募集人員が減ると志願者も減少するものだが、関西医科大学は学費の減額と東京試験会場の新設、更に新キャンパスが完成したこともあって73人の志願者増を達成した。関西医科大学は来年度入試から後期日程も設けるなど矢継ぎ早に入試改革を押し進めている。今後の動向には要注目である。

これまで見てきたように学費の低減は志願者の動向にも影響を与える。特に減額幅が大きいと志願者も大きく動く。学費の低減があった際には志願者数がどの程度動くのか綿密な予想が欠かせない。
日本大学は前年から志願者を768人(22.8%)増加させ、4,132人の志願者を集めた。1次試験日が一日だけの大学で志願者が4千人を超えるということは、これまでなかったことだ。ちなみに募集人員は102名であるから志願倍率は40.5倍になった。日本大学がこれだけの志願者を集めたのは天野医師の影響もあるかもしれないが何と言っても「センター試験の難化」の影響である。センター試験を終えて、それからでも出願が間に合う大学として多くの受験生が日本大学を考えたと思われる。大阪医科大学(後期)の志願者増も同じ理由と考えていいだろう。

新たに募集人員25名で後期日程を実施した藤田保健衛生大学は募集人員60名の前期日程の志願者を336人上回る1,905人の志願者を後期日程で集めた。前期定員の半数以下の定員にもかかわらず、後期入試の志願者は前期を上回った。後期日程の1次試験合格者は418人であったがこれは募集人員が2倍以上の前期日程の1次試験合格者数を上回る人数であった。結局、後期日程の最終合格者は繰り上げ合格者も含めて27人と少なく1次合格者の中に割り切れない思いを抱いた受験生も少なくなかったようだ。

志願者が1,400人増となった東海大学は、1次試験の2日目が他大学と重複せず単独での試験となったことが大きな要因である。

2014年度入試のポイント

学費の減額を行う大学が毎年続いているが、2014年度入試では埼玉医科大学が初年度納入金を225万円下げる。6年間の学費では100万円の減額となる。それほど大きな減額ではないので受験生の反応も大きなものにはならないと思われる。しかし、帝京大学は6年間の学費を一気に約1,170万円減額する。これまで帝京大学は、私立医学部の中で最も学費の高い大学であり、それも他大学に比べかなり高額に感じる学費であったが、受験生がどう反応するのか慎重な見極めが欠かせない。帝京大学の志願動向を考える際、忘れてはならないのは試験日程である。帝京大学は2次試験を行わないので1次試験日だけを考えればいい。昨年は東京慈恵会医科大学と福岡大学と試験日が重なっていたが来年入試では、この2校に加え日本医科大学、東海大学と試験日が重なる。学費の値下げと試験日の重複のどちらを重く考えるかだが、学費の値下げの影響の方が大きいのではないかと考えられる。日本医科大学とは、それ程受験者層が重ならないと考えられる。東海大学は試験日が2日間ある。このことを考えると来年入試の帝京大学は、学費低減により若干、志願者は考えていいだろう。同時に、成績上位層も増えるであろう。学費の減額とは異なるが、東京女子医科大学では一般入試の成績上位10名に対し初年度納入金のうち780万円を免除することにした。特待生となると東邦大学より低い学費となる。10名と少ないが成績上位層が増える可能性は十分あるだろう。

募集人員の変更もいくつかの大学で行なわれる。東海大学では編入学試験の募集人員を10名減として一般入試の募集人員を10名増として70名にする。同時に、これまで一般入試では東海大学だけが行ってきた適性試験の廃止も行う。募集人員が増えるだけでなく、これまで受験生の負担となっていた適性試験も廃止されることで志願者はかなり増加すると考えていいと思うかもしれないが、そう単純ではない。先の帝京大学のケースと同じように入試日程も考えなければならない。先にも触れたが東海大学が志願者を一気に1,400人も増加させたのは、2日間ある試験日で重複したのが東京医科大学だけだったことが大きい。ところが来年入試では日本医科大学、帝京大学、福岡大学と試験日が重なる。志願者は横バイか若干の減少と考えていいだろう。大阪医科大学、関西医科大学の関西の2大学では一般前期、福岡大学では一般の募集人員がそれぞれ5名減少する。5名の定員はセンター試験利用入試または後期日程に振り向けられる。募集人員減には受験生は敏感に反応する傾向があるので、この3大学の一般前期または一般では多少の志願者減となることが考えられる。

その福岡大学では、募集人員10名で新たにセンター試験利用入試が実施される。センター試験で使用される科目は英語(リスニングは含まない)、数学ⅠA、数学ⅡB、理科2科目、国語(近代以降)である。地歴公民は使用されず700点満点で行われる。特に九州の国公立医学部志望者を含む医学部志望者全体から人気を集めると思われる。また、大阪医科大学では募集人員5名でセンター試験利用入試の後期を実施する。後期日程で募集人員5名となればハイレベルの戦いが予想される。これに伴い近畿大学のセンター試験利用入試(後期)は若干ボーダーラインが下がることがあるかもしれない。

順天堂大学では英語重視の姿勢を明確に打ち出すことになった。もともと英語の配点が高かった一般に加え、センター試験利用入試、センター・一般独自併用試験でも英語の配点を高くし英語重視の姿勢が鮮明になった。このことに受験生がどう反応するかは未知数でではあるが、それ以上に注目したいのは順天堂大学の1次試験日である。私立医学部一般入試が始まって3日目という点は前年と変わりないが、東邦大学と杏林大学の1次試験日が遅くなったことにより関東の医学部では最も早い1次試験日となった。このことを含め入試日程の変化が少なくなく、実際にどこの大学を受験するのかという受験校の選定にはきちんと時間をかけて後悔しない受験校選びを行ってもらいたい。

入試日程上の注意点を挙げておこう。まず初日の愛知医科大学であるが、化学の出題ミスに伴う採点のやり直しで合格者が19人追加され来年4月の入学が許可された。この19人分の合格者は2014年度入試の合格とはしないことが明らかになった。他大学と試験日の重複がなく、志願者増となりそうだ。翌日は岩手医科大学と兵庫医科大学が重なっているが、前年は更に杏林大学も同一試験日であった。杏林大学が抜けたことで特に岩手医科大学の志願者は増えると予想される。東京医科大学と久留米大学の試験日が重なったが、東日本の受験生は東京医科大学を受験するケースが多いであろう。特に成績上位者が東京医科大学を受験することで久留米大学にも影響が出るかもしれない。2日目が3校と重なった東海大学は合否を素点でなく偏差値で判定する。東海大学を受験するのであれば、2日目は必ず受験しておきたい。

(出典 MELURIX)

カテゴリー:医学部受験のツボ

医師という仕事の未来

2013年11月1日

東京ハートセンターセンター長
医師

医師資格は世界共通

 あたりまえのことですが、世界中の人々の体の構造は同じです。ですから、一人前の医師になれば、それは世界中で通用するはずの「資格」なのです。
 もちろん文化や言葉の違いはあります。死についての考え方はその人が信仰する宗教や、魂の強度によって少し変わってくるかもしれません。しかし、親子の情愛や家族を大切にする気持ちは世界中変わることはありません。ひとたび人体を相手にすれば、医師がすべきことはどこの国でも同じなのです。
 私の専門の心臓外科など、まさに世界共通のルールで治療に参加できます。まったくわからない言語が使われる環境でも、間違いなく可能です。まず心臓が同じです。そして手術方法、その考え方、トラブルの避け方、いずれも世界共通です。本物の技術を持った「プロ」であれば、いつでもどこでも誰に対してでも、医師としての実力は如何なく発揮できます。言わば100メートル走のトップアスリートと同じです。足さえ速ければ世界ですぐに通用するのです。
 現実問題として、国ごとのライセンスの違いなど、壁がないわけではありませんが、これからはFTAやTPPが象徴するように、グローバル化の時代です。全人類同じ医療、という考え方が広まることでしょう。世界共通医師資格、世界共通専門医資格、といった制度が確立されてしかるべきです。トップアスリートの資格が世界共通であるように、「プロ」医師の資格を認めない文明社会はありえないのです。

生涯現場で自分の力が求められる

 トップアスリートを例に挙げましたが、彼らに共通する現象があります。彼らはライバル同士なのに、試合で顔を合わせると仲のいい友達同士に見えます。単に挨拶するだけでなく、情報交換し、互いに意識し合い、コミュニケーションし合います。この時彼らは意識をシンクロナイズ、つまり同期させているのです。こうして自分の位置を確かめ、日々精進し合い自分を奮い立たせているのです。ただし群れを作るのとは違います。負け組は群れたがりますが、勝ち組は群れません。では、どうすればそんな一人前の医師たちの仲間入りができるのでしょうか。
 大切なのは現場です。一人の医師として、全身で患者をしっかり受けとめ、診る。何より大事なことは、目の前で起こる患者さんの病気や治療の成り行きをつぶさに観察、分析し、そして何かを感じ取ることです。そうした姿勢で経験をコツコツと積み重ねて行けば、実力が身についていきます。他の職業と違って、医師は転職とは無縁です。医師の経験は医師である限り生涯有益に生かせます。すべての患者の思い出が自らの血となり肉となり蓄積し、それを永久に次の仕事に生かせます。生涯現場に居続けられる、あるいはそれが普通、というのが医師に仕事です。
 まさにそれは「手に職をつける」とも言えます。言い換えれば「現場にこだわる」ということです。医師は生涯、現場で這いつくばって駆けずり回る仕事なのです。患者の不平不満に耳を傾け、時に嘲りを受け、恐怖と不安の中で一人ひとりの患者を治療します。そして最後まで妥協しなかった自分、恐怖を乗り越えた自分を見たならば、世界中の誰にも負けない充実感、達成感を味わうことができます。診療の途中で敗北のどん底に突き落とされることも少なくありません。自分の診断や治療は間違っていないだろうか?不安でいっぱいの毎日です。50歳を過ぎても60歳を過ぎても同じです。ずっと現場で汗水たらす仕事なのです。これは本当に素晴らしいことです。それだけ自分が求められている、ということにほかなりません。

大切なのは現場です。
経験を地道に積みましょう。

実力があればヒーローになれる仕事

 ところで皆さんはひょっとして人生の成功は偉くなって、部下をあごでこき使って楽をして給料をがっぽりもらえるようになること、と勘違いしていませんか?仕事もしないで権力の座にのうのうと居座る社会悪を「不耕貪食の徒」と江戸時代の八戸の医師、安藤昌益は酷評しましたが、そんな立場の人はこの社会には一人もいません。皆、給料に見合った仕事と重い責任を背負っています。医師もその例外ではありません。
 医師は個人の技能と人間性が患者に一瞬にして見抜かれてしまう、実力第一の仕事です。見えないところで一生懸命働いていても、認めてもらいにくい仕事もあります。世間というのはその点、バカばっかりです。私もそのバカの典型で、他の職業のみなさんが日頃どんなことで神経をすり減らし、時に理不尽な扱いに耐え忍んでおられるのか、ぜんぜん知らないのです。ところが医師は違います。
 「本当にありがとうございました」
 患者さんから心のこもった感謝の言葉を頂戴します。そして仕事、つまり治療の成果をしっかりと受け留めてもらえます。特に心臓外科の成果は誰の目にも明らかです。肩書きや経歴など関係なく、結果できっちりと判断してもらえるのです。まさに「観客が見守る中、大活躍してヒーローになれる仕事」といえるのではないでしょうか。

美しものの中に身を置き、
愛を育む医師になりましょう。

医療の根源は愛

 医師になって醜い人間の姿に触れることもしばしばあります。患者の妄言や、言われのない非難に合うこともあるかもしれません。
 そんなとき私は患者さんの本当の心はどこにあるのか、より深い考察を試みます。「愛」は医療の根源と言われており、「愛」なくして本当の意味で患者を治すことはできないと信じているからです。「愛」というと陳腐に聞こえるかもしれませんが、プラトンの『饗宴』に登場する巫女ディオティマが定義した「愛」を私なりに要約すると次のようになります。
 「美とは善きものであり、普遍的な価値を持つもの。その美の中で新たなる魂を出産する事こそが愛である」
 芸術家や職人、立法家はそれができるとディオティマは言いますが、医師も「新たなる魂」を出産する職業の一つにほかなりません。
 医師にとって「新たなる魂」とは「患者の再生」です。医師が「美の中にある」とはどういうことか。豪奢な家に住み、高級車を乗り回すということではありません。医師にとっての美とは、例えばライバルとするに相応しい美しい医師たちを見抜き、その中に自らの身を置き、また自分も彼らから一目置からる医師となれるよう研鑽を積み続けるということでしょう。自分がそうした在り方になれたなら、自然と患者の言葉の本意を理解できるようになり、患者もまた医師の言葉を理解し受け入れてくれるようになるのです。
 患者の再生を心から願い、それに従事する医師になるためには、美しきものに囲まれて生きること。そうすれば目の前の患者だけではなく、広く医療の発展に寄与し、世界を愛で満たすことのできる医師になれる、私はそう思うのです。

(出典 週刊朝日MOOK)

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