医学部ガイド

2013年8月24日

伝統校から新設校まで多彩な顔ぶれ

医師や医学研究者を養成する医学部医学科(筑波大は医学群医学類、金沢大は医薬保健学域医学類)は、現在、国立42大学、公立8大学におかれている。これに防衛省所管の防衛医科大学校を加えれば、国公立大は51大学となる。

新制大学発足当初は、旧制の医科大学や医学専門学校を母体とした大学が主体だったが、1970年(昭和45年)以降、国の一県一医大構想のもと相次いで国立の単科医大が新設された。各大学・前身校の設立年(カッコ内は前身校。源となった病院等は省略)をみると、次のようになっている。

1861年 長崎大(医学所)
1868年 東大(東京医学校)
1869年 鹿児島大(鹿児島医学校)
1871年 名大(仮医学校)
1879年 金沢大(金沢医学校)
京都府大(医学校)
1880年 岡山大(岡山県医学校)
1882年 神戸大(県立神戸医学校)
1896年 熊本大(熊本医学校)
1899年 京大(医科大学)
1901年 東北大(仙台医学専門学校)
1903年 九大(京都帝国大学福岡医科大学)
1915年 大阪大(大阪医科大学)
1922年 新潟大(新潟医科大学)
1923年 千葉大(千葉医科大学)
1933年 北大(北海道帝国大学医学部)
1943年 群馬大(前橋医学専門学校)
三重大(三重県立医学専門学校)
徳島大(徳島県立医学専門学校)
名古屋市大(名古屋市立女子高等医学専門学校)
1944年 弘前大(青森医学専門学校)
東京医歯大(東京医学歯学専門学校)
信州大(松本医学専門学校)
岐阜大(岐阜県立女子医学専門学校)
山口大(山口県立医学専門学校)
福島県医大(福島県立女子医学専門学校)
横浜市大(横浜市立医学専門学校)
大阪市大(大阪市立医学専門学校)
1945年 鳥取大(米子医学専門学校)
広島大(広島県立医学専門学校)
札幌医大(北海道庁立女子医学専門学校)
奈良県医大(奈良県立医学専門学校)
和歌山県医大(和歌山県立医学専門学校)
1970年 秋田大
1973年 旭川医大
山形大
筑波大
愛媛大
防衛医大
1974年 浜松医大
滋賀医大
宮崎大(宮崎医科大学)
1975年 富山大(富山医科薬科大学)
島根大(島根医科大学)
1976年 高知大(高知医科大学)
佐賀大(佐賀医科大学)
大分大(大分医科大学)
1978年 福井大(福井医科大学)
山梨大(山梨医科大学)
香川大(香川医科大学)
1979年 琉球大

国公立 医学部 医学科の試験区分別募集人員

大学名 前期 後期 推薦 AO 編入
【国】 旭川医大

40 22 10 40 10
北大

102 5 5
弘前大

67 40 20
東北大

120 15
秋田大

55 25 40 5
山形大

95 10 20
筑波大

63 49 5
群馬大

73 35 5
千葉大

97 20 5
東大

100
東京医歯大

82 15 4 5
新潟大

87 35 5
富山大

60 20 25 5
金沢大

85 27 5
福井大

55 25 30 5
山梨大

80 45
信州大

55 45 20
岐阜大

32 35 40
浜松医大

75 10 30 5
名大

90 5 12 5
三重大

75 10 40
滋賀医大

75 25 17
京大

107
大阪大

85 15 10
神戸大

75 10 25 5
鳥取大

60 25 20 5
島根大

62 40 10
岡山大

103 12 5
広島大

75 20 20 5
山口大

52 15 40 10
徳島大

72 42
香川大

59 25 25 5
愛媛大

40 25 42
高知大

65 15 30 5
九大

111
佐賀大

51 10 45
長崎大

76 40
熊本大

80 15 20
大分大

65 35 10
宮崎大

50 20 40
鹿児島大

67 23 17 10
琉球大

75 25 7 5
大学名 前期 後期 推薦 AO 編入
【公】札幌医大

75 35
福島県医科大

67 23 40
横浜市大

90
名古屋市大

70 25
京都府医大

100 7
大阪市大

92
奈良県医大

22 53 38
和歌山県医大

79 21

6年一貫教育で、教育課程に工夫

医学科の修業年限は6年。すべての大学が6年一貫教育で、選択科目や単位制の導入、教育課程の見直しなど、さまざまな工夫を凝らしたカリキュラムを編成している。カリキュラム編成の柱は「PBL(Problem based learning)チュウトリアル教育」「臓器別統合カリキュラム」「クリニカル・クラークシップ(診療参加型臨床実習)の3つ。

PBL(Problem based learning)チュウトリアル教育は、5~6名程度の少人数の学生がチューター(教員)の助言を得ながら個々の問題解決に必要な事柄を学ぶ方式で、学習を進めるための課題(症例)が提示され、学生はその課題事例の中から推測されるさまざまな医学的な問題点や疑問点、論点などをグループ討論によって抽出。その問題点の背景や成因について仮説を立て、その仮説を検証するためには何が必要か、何をどのように自己学習すればよいのかを話し合い、各自が参考書、文献、指定された教科書、インターネットなどを駆使して自己学習を行う。そして各自が学習してきた事柄を発表・説明し、ディスカッションしながら結論をまとめていく。

臓器別統合カリキュラムは、基礎医学や臨床医学の知識を統合し、具体的な病態や症状から入って病気の診断、治療を学ぶ。神戸大では神経、呼吸器、消化器、内分泌、代謝などといった統合カリキュラムが用意され、例えば神経では、中枢神経系および末梢神経系のすべてについて基礎と臨床が一体となって講義を行って、一見複雑に見える神経系の形態と機能を学び、疾患により由来する症候と検査を理解する。その後、機能的異常および形態的異常を呈する疾患群について、病態と病理、内科的治療、外科的治療を連携して学習する。また呼吸器では、解剖学、発生学、微生物学、生理学、薬理学、病理学的知識を結集し、これらを統合した上で呼吸器病学、感染症学、呼吸器腫瘍学の理解と病態の把握を行っている。

クリニカル・クラークシップ(clinical clerkship)とは、従来の見学型臨床実習とは異なり、学生が医療チームの一員として実際の診療に参加し、より実践的な臨床能力を身につける臨床参加型実習のこと。学生はstudent doctorとして診療に参加し、指導医の指導・監視のもとで一定に範囲内での医行為を実践。自らの主体性と責任感をもって学ぶことが求められる。

入学から卒業までの履修の流れ

入学から卒業までの履修の流れをみると筑波大は医学・医療の現場を体験し、問題点を自ら考え分析し解決する能力を養うためのカリキュラムを導入。Phase Ⅰ(1年次~3年次)は医学の基礎コースで、生命科学やヒトの構造と機能の基礎、ヒトの正常と病態について学ぶ。学習形式は問題解決型チュートリアルを中心としており、ナビゲーター役の教員のアドバイスを受けながら、少人数グループでの討議・自己学習・レポート作成を行う。小グループ討論の前後には、学習の鍵となる講義・実習も行う。1年次は先端医療から考える免疫入門など基礎医学中心のコース、2~3年次は消化系、循環系など臨床医学を中心とするコース、医療と環境など社会医学を中心とするコースから構成され、これらすべてが基礎・臨床・社会医学の分野が統合された内容になっている。

Phase Ⅱ(4年次・5年次)は医療チームの一員(Student Doctor)として長期間の臨床実習を行う。4年次1学期の臨床実習前の演習(診療法・診療録の書き方など)を経て、夏から5年終了時の1年半をかけて臨床実習を行う。学生は診療チームの一員として患者を受け持ち、実際の診療を通して医療面接、診察法、基本的な手技、医師としての適切な態度などを確実に身につける。さらに、単に病気を学ぶのではなく、患者の思い、悩みを含めて問題を捉え、ほかのスタッフと協力し合いながら、問題を多面的に解決する能力を身につける。5年次後半には長期の院外実習があり、地域の病院・診療所などにおいて大学病院とは異なる医療現場で学ぶ機会を用意している。

Phase Ⅲ(6年次)は大学内外の施設(海外も含む)において、自分の興味のある分野の実習を行い、仕上げとなるプログラムを履修する。

医学概論は、医師に求められる臨床能力について、医療倫理、チーム医療、ヘルスプロモーション、医師患者関係などの臓器別・症候別の枠組みでは修得が難しい領域について体系的に学ぶことを目的として1~5年次を通じて学ぶ。入学直後の時期に行われる入院体験や外来患者の付き添い実習、2年次の在宅ケアコース、3年次の地域における健康教育など、多くが体験型のプログラムとなっていることが特徴である。

医系大受験前にこれだけは知っておこう(7)

2013年8月12日

2025年は、「本格的な超高齢化社会の始まる年」
日本の医学界は全力をあげて、その対策に取り組む必要が!!

これから医歯薬系の学部に進学する人たちが、卒業後にそれぞれの国家試験に合格して、医療の現場に進出した時、まず直面するのが「2025年問題」であるという。そして、とくに医学部の学生に期待されるのは「レベルの高い総合医になって、地域医療に貢献することだ」とも言われているので、この問題をめぐる動きをまとめてみた。

(7)世界も注目するトップランナーである日本の高齢化対策

これから医学部に進学する人は、総合専門診療医と地域医療の問題に深く関わることになるわけだが、それにしても下記の表 (人口の推移と将来人口) を見てもらえば分かるとおり
今後の日本は大変な高齢化時代を迎える事になる。

人口の推移と将来人口

総人口 年齢3区分別人口構成比
0―14歳 15―64歳 65歳以上
1950年 8412 万人 35.4% 59.6% 4.9%
1960年 9430 万人 30.2% 64.1% 5.7%
1970年 10466 万人 24.0% 68.9% 7.1%
1980年 11706万人 23.5% 67.3% 9.1%
1990年 12361万人 18.2% 69.5% 12.0%
1995年 12557万人 15.9% 69.4% 14.5%
2000年 12693万人 14.6% 67.9% 17.3%
2005年 12777万人 13.7% 65.8% 20.1%
2010年 12806万人 13.2% 63.8% 23.0%

(将来人口)

2015年 12660万人 12.5% 60.7% 26.8%
2020年 12410万人 11.7% 59.2% 29.1%
2025年 12066万人 11.0% 58.7% 30.3%
2030年 11662万人 10.3% 58.1% 31.6%
2035年 11212万人 10.1% 56.6% 33.4%
2045年 10221万人 9.9% 52.4% 37.7%
2055年 9193万人 9.4% 51.2% 39.4%
2065年 8136万人 9.0% 50.6% 40.4%

しかし、この急激な高齢化は日本だけのことではなく、韓国やシンガポールといったアジア諸国でも、同じ道をたどることが予想されており、その意味では、アジア諸国をはじめとする世界各国が、来るべき自国の将来 (高齢化) に重ね合わせて、そのトップランナーである高齢化対策に、注目しているともいえるだろう。

そこで、東京大学・高齢化社会総合研究機構では来るべき超高齢社会に向けて、学際的な見地から「長寿社会のまちづくり」の計画を立てて、各種の取り組みを行っているという。その主なものが在宅医療・ケアの推進であり、地域 (市町村) の医療・介護従事者が主体的に取り組めるように、郡や市の医師会と市町村行政が中心となって➀医師が在宅医療に取り組む多職種連携研修会や➁在宅多職種連携を促す情報共有システム開発➂開業医同士が連携して地域の患者に24時間の安心を確保する取り組みなどを試行しているという。

これには医師だけでなく、看護師や保健師、介護士など、さまざまな医療スタッフが重要な役割をするので、その多職種連携が必要不可欠になるだろう。
超高齢化社会への助走期間ともいえる今、医療系の大学や学部に進学する人は「人類が初めて経験する大変な医療現場」に直面するはずだが、「だからこそ、頑張りがいがある」というプラス思考で、さまざまな試練に立ち向かってほしいものだ。

カテゴリー:医学部受験のツボ

医系大受験前にこれだけは知っておこう(6)

2013年8月8日

2025年は、「本格的な超高齢化社会の始まる年」
日本の医学界は全力をあげて、その対策に取り組む必要が!!

これから医歯薬系の学部に進学する人たちが、卒業後にそれぞれの国家試験に合格して、医療の現場に進出した時、まず直面するのが「2025年問題」であるという。そして、とくに医学部の学生に期待されるのは「レベルの高い総合医になって、地域医療に貢献することだ」とも言われているので、この問題をめぐる動きをまとめてみた。

(6)超高齢化社会で必要とされる総合的な医療ができるジェネラリスト

医学会はこれまで、医学が進歩・発展するにつれて、専門分野が消化器、呼吸器、循環器、腎臓、肝臓、アレルギーなどと細分化され、心臓外科や臓器移植などの難しい手術をする専門医が、華やかな存在として注目されてきた。それは医学と医療を進歩・発展させるうえで、必要不可欠のものだったともいえるだろう。

しかし、社会が超高齢化したいま、地域の健康を守るうえで必要とされるのは、そのように狭い分野のスペシャリストではなく、「臓器横断的な視点を持ち、幅広く総合的な医療ができるジェネラリスト」なのである。

だから医学教学白書 (2010年版) でも 「日本の医学教育の課題と展望」として、総合診療教育と地域立脚型医学教育の項目を設け、早くから次のように提言していた。

「さまざまな健康問題を的確に診断するには、幅広い臨床的知識と論理的に情報を整理していく能力 (臨床推論能力) が必須であり、ここに総合専門診療医ならではの価値がある。また的確な診療のみならず、患者中心の治療・アドバイスを展開するためには、患者の精神・心理状態や社会的背景をも考慮しながらアプローチすることが必要であり、これも総合診療専門医の真骨頂である。医師不足の解消を含め、日本の医療をよくするためには、総合診療部門を大学に確保して、診療だけではなく、教育・研究にも参加させるべきだろう」

「大学病院だけで臨床医学を学んでいると、地域医療における保健活動の実践や、福祉との連携などの姿が、ほとんど見えてこない。これまで地域の第一線で診療の従事する医師 (特に診療所の医師) が、医学教育にはほとんど関わる機会を持たなかったのは、学習者にとっても地域医療に従事する医師にとっても不幸なことだった。大学と都道府県が連携して、地域・僻地を学習の場として組み込む工夫をすることが望まれる」

とくに後者については最近の医学部入試に「地域枠」や「県内枠」が設けられ、卒業後は地元の医療機関に勤務することを条件にして、入学する者が増えている。卒業後の進路が制約されるかわり、在学中の学費や生活費が地元の自治体から支給されるケースが多いので、それを利用する医学部進学も魅力ある進路選択ではなかろうか。

―「医系大受験前にこれだけは知っておこう!!(7)」をお楽しみに!

カテゴリー:医学部受験のツボ
1 / 212

このページの先頭へ