論説文を初等教育段階から得意にしていく方法 (10)
~その10:論説文に強くなる読書の方法(その2)~
「論説文に強くなる読書の方法」その2ですね!
よろしくお願いします!
(1)好きな分野の本を読む
前回、私は「論説文に強くなるためには、論説文を読まなければならない」という点について述べました。論説文は、物語的な文章とは異なる構造をもっているため、それに慣れることが要請されるためです。そのためには、必然的に論説文関連の読書をすることによって補っていかなければなりません。では、具体的にどのように論説文関連の本を読んでいけばよいのでしょうか。そこで今回の課題とは、この点に関して述べることです。
この点について結論から申しますと、「自分自身の好きな分野の本を読む」ということです。あるいは、「自分自身の比較的親しみのある分野の本を読む」とも申せましょう。これは換言すれば、「興味・関心の高い分野に関して書かれている本」ともいえます。しかし、そうはいっても簡単に目的とする本は見つけられない、という意見もあるでしょう。そこで、この点に関して、まず私は説明していきたいと思います。
(2)説明文から入っていく
これはすでに何度も述べましたが、簡単にいえば論説文とは、筆者が自己の意見を、様々な説明をしながら時には具体例を引いて主張している文章です。つまり、論説文は説明にあたる部分とそれに対する主張にあたる部分からできているといってよいでしょう。もっと端的にいえば、説明文プラス考察文の形態です。いわば、論説文は、説明文の発展形であるといえるでしょう。そこで、いきなり論説文から入るのが難しいと思われる生徒諸君は、まず説明文から取り組んでいくことをお勧めいたします。また、このやり方で進めていけば、自分自身における興味・関心の高い本も比較的見つけやすいでしょう。
これは、別の表現をすれば、「調べ学習」といえるでしょう。自分自身が興味・関心を持つ対象について、何か疑問があるとか、もしくは一層深く追究していきたいと感じた際に、それについて調べていく学習です。むろん、調べ学習に関しては多くの学校でも行われています。別に新しいことではありません。しかし、私のいうところの調べ学習は、目的がまったく違います。それは、あくまで論説文を得意にしていくためのワンステップに過ぎません。すなわち、その意図は説明文についての読書を段階的に発展させて、次の論説文へと飛躍させ、最終的には論説文を扱った入試問題に完勝するということです。
(3)図鑑等の文献で調べる
では、具体的な説明に入っていきます。例えば、ある生徒が昆虫に対して興味・関心があるといたします。この傾向は、どちらかというと男子に多いかもしれません。よって女子は、これを草花等に置き換えても構わないでしょう。いずれにせよ、ここでは仮に興味・関心の対象がカブトムシやクワガタムシであると考えてみます。その際、「幼虫から成虫に至る飼育の方法」がわからないとしたら、どのようにして調べたらよいでしょうか。今時の小学生ならば、きっとインターネットで調べることを、最初に思いつくのではないですか。むろん、それは間違いではありません。周知のごとくインターネットには、おびただしい情報が載っています。これさえ使えば、この世のあらゆる情報を居ながらにして手にすることが可能です。それほど豊かであり、かつ利便性の高い情報がインターネットによって手に入る時代に私たちは生きているのです。
しかし、ここで少し待っていただきたい。インターネットは確かに豊富で便利な情報網です。逆に言うと、だから少々困りものなのです。ここで、誤解を与えるといけないので予め断っておきますが、私は決してインターネットに指一本触れてはならない、といっていのではありません。繰り返しますが、インターネットは大変便利な情報網です。ところが現代人の多くはインターネットで、ある項目を調べ終われば「もうそれで事足れり」として、そこから前へ進むことをしません。これが、実は困りものなのです。
すでに述べたように、調べ学習は、あくまで論説文を得意にしていくためのワンステップに過ぎないのです。換言すれば、 単なる手段の一つであって決して目的ではありません。そうであれば、「調べ終わればすべて終わり」では困るのです。要は、その時点その範囲その段階からの発展形が求められるのです。したがって、インターネットは極論すれば、調べ学習におけるほんの入口程度に考えてください。では、その入口より先に進むには、どうすればよいのでしょうか。それが、インターネットで調べた後で、図鑑等の文献を読むことです。先ほどのカブトムシやクワガタムシの例であれば、まずインターネットでだいたいの内容を調べた後で、ついでに図鑑等も検索し「こんな本もある、ああこの本も使えそうだ」等々の文献についての情報を得るのです。では、そのような過程を経て、求める図鑑類が見出されたとしましょう。次に、その本を手に入れて調べていく段取りとなります。
(4)調べてからどうするか
手に入れた図鑑等を調べた結果、カブトムシやクワガタムシにおける「幼虫から成虫に至る飼育の方法」が一通りわかったといたします。当然、そのプロセスの中で、おそらく他の関連事項もたくさん情報として習得できたことでしょう。例えば、カブトムシやクワガタムシの飼育について学んでいるうちに、これらの昆虫に関する生活史にも触れるとか、生育を妨害する要因、人工的な飼育環境と自然環境との相違等々です。こうして、情報についての視野はどんどん拡大していくことでしょう。では、この調べ学習における視野の拡大を、そこからどう発展させていけばよいのでしょうか。このような思考プロセスの中で、ある生徒は次のような発展的な興味・関心にたどり着きました。それを少し紹介しましょう。
①小学校2年生のA君は、カブトムシやクワガタムシについて調べているうちに、「自然に生育するこれらの昆虫の絶対数が減りつつあるのではないか」という疑問を持ちました。なぜなら、カブトムシやクワガタムシを養殖して販売している店が多いからです。もし、自然に生育するカブトムシやクワガタムシが多ければ、何も養殖までして売る必要はないでしょう。
②そこで、調べていくうちにカブトムシやクワガタムシはクヌギ(ブナ科コナラ属の落葉高木)やコナラ(ブナ科コナラ属の落葉広葉樹)などの樹液に集まるのですが、その樹木そのものが減っているのではないか、とも考えました。
③人工林においてスギに絶対的な地位を奪われているクヌギやコナラは、その樹林自体が減少している点も調べてみてわかったことです。また今後、自然林の伐採が進めばさらに減っていくのは必至である点も理解できました。
④これは、単なるカブトムシやクワガタムシの減少問題のみではなく、人工林の増加による恣意的な自然の改変、すなわち環境問題にも発展していく前兆ではないか、とも考えられます。
では、このようなA君の思考プロセスには、いったいどんな意義があるのでしょうか。それは、単なるカブトムシやクワガタムに対する興味・関心から出発して、人工林の増加によるクヌギ・コナラ等の広葉樹林の減少、さらには環境問題にまで視野を広げて考えている点でしょう。しかも、かかるプロセスには、単なる説明文を読む以外の、「調べる→疑問を出す→自分なりに考えてみる」といった一連の論説文的な思考が働いている点に私は注目いたします。
以上のような説明文から入った調べ学習は、得られた知識を基にして視野を広げていくとともに、さらに一歩進んで自分なりの思考を導き出すという、予想外の効果を出しました。そこで、ここまで私の文章を読んでこられた方はもうお気づきでしょう。そうです。このようなA君の思考の発展は、論説文における叙述・展開に非常に近いという点です。なぜなら、論説文とは「説明文プラス考察文の形態」だからです。確かにA君における思考の発展は、「できすぎ君」かもしれません。しかしながら、私は生徒諸君にもA君のような思考を是非お勧めしたく思っています。
このように、いきなり論説文から入るのではなく最初は説明文から読んでいくのです。今回は現代的にインターネットから入っていく方法、そして図鑑等での調べ学習とその発展について例を挙げて説明しました。今回はたまたまカブトムシやクワガタムシといった理科的な分野を取り上げましたが、次回は別の分野を扱ってみるつもりです。さらに、他の「論説文に強くなる読書の方法」に関しても申し述べたいと考えています。
ありがとうございました。
次回は第3回!お楽しみに!
コメント受付中です!
Powered by Facebook Comments