論説文を初等教育段階から得意にしていく方法 (9)


~その9:論説文に強くなる読書の方法(その1)~

今回からは「論説文に強くなる読書の方法」の連載です。
よろしくお願いしまーす!

(1)国語という教科の成績には、平素からの言語活動が大きく影響する

国語全般に関していえば、読解問題に強くなり正答率を上げるには当然、読書の習慣が必要不可欠です。これは古くから言われていることであり、いわば通説です。その理由は、ごく簡単なことです。国語という教科は平素からの言語を通しての生活史を、そのまま反映するものだからです。例えば、漢字その他の語句の理解とその日常生活での使用頻度が、国語における言語認識を大きく左右いたします。家庭においての普段の会話の中で語句の正しい意味やその使用を大切にしている場合には、子どもは自然とレベルの高い言語活動を身につけます。これは、英単語・英熟語及び構文をたくさん知っている方が英文を読みやすいということと同じです。私は大学生に英文の文章理解の講義もしていますが、大学生ともなると今までの英単語・英熟語等の知識の多少にかなりの格差がある状態にいつも驚いています。

話を国語に戻しますが、いわゆる「ら抜き言葉」にしてもそうです。「ら抜き言葉」は現在かなり広く使われており、一部ではあたかも市民権を得たかのごとき観があります。しかし、この言葉は助動詞における使用上の誤りです。例えば、家庭において子どもが「お母さん、これ食べれるの?」「ええ、食べれるわよ!」といった遣り取りを普段の会話で何気なく繰り返していれば、子どもはこれが当然の日本語表現であると思い込むでしょう。しかしながら、この「食べれる」では、可能を表す助動詞の使い方が明らかに間違っています。正しくは、「食べられる」であることは申すまでもありません。察するに、このような「ら抜き言葉」の出現は、可能・尊敬・受身・自発という言語使用上の区別がつかない日本語能力の不足が背景にあって、それをカバーするために誰かが案出したものでしょう。もちろん、「食べれる」の方が「食べられる」よりも相手にわかりやすいといえばそれまでですが、人によっては耳に付く場合もあります。

単なる日常会話において、それほど神経質になる必要はないにしても、平素の言語活動が国語の学習に何かしらの影を落としている点は強く指摘しておきたいと思います。「ら抜き言葉」その他の国語学習上の問題点については、また章を改めて説明いたします。

(2)論説文に強くなるためには、論説文を読まなければならない

これは当たり前のことですが、論説文に強くなるためには当然、論説文に親しんでいく必要があります。ところが、不幸にして現在の小学校等での読書指導は、どちらかといえば物語的な文章を読ませることに重きを置いています。むろん、物語的な文章を読むことが悪いというのではありません。それはそれで読書としては立派な営みです。しかし、論説文に強くなるには物語的な文章は、はっきり言って不向きです。それは、物語的な文章と論説文とは構造上において根本的な差異があるからです。それゆえ、いかに幼少から読書に親しんでいるとはいえ、論説文の試験問題に接した際に驚き戸惑うのも無理からぬことなのです。では、物語的な文章と論説文とは、構造上どのような差異があるのでしょうか。

第一に、論説文はある事象や学説もしくは見解を、論証の技術を用いて説明あるいは主張するものだという点です。そこには、まるで数学の証明問題を解いていくような冷徹犀利な理性が働いています。数学の証明問題を解くには、与えられた条件を用いて客観的な論理を構築しなければなりません。それがため、読み手の方も論証の筋道を追って読んでいく必要があります。いうまでもなく、この過程が今の子どもたちには、とても苦手なのです。それは、現代における「速さ」を売り物にする高度に発達した情報化が原因です。それは、いわゆるスマホ(smartphone 多機能携帯電話)やパソコン(personal computer 個人占有コンピュータ)を当たり前のように使いこなす世代の思考様式が災いしているともいえます。つまり、その操作において、ある情報を集めるに当たりほとんど「待つこと」を要求されない社会が現代です。この点については、「今すぐログイン」などというキャッチフレーズが当然のようにまかり通っている現代の状況を一瞥しても了解できるでしょう。

このような状況を至極当然として生活している現代の子どもたちには、論説文における論証の過程を順次追って読み解くことは、とてもまどろっこしく感じられます。むろん、論説文の中には論証の過程が比較的簡単で読みやすいものもありますが、受験校の難度が上がるほど論証の過程も難化していく傾向があります。特に近年におけるセンター入試の現代文では、論説文が長文である上に難度も高くなっています。

第二に、論説文は物語的文章とは異なり、その理性的な論証構造について日常生活で接する場面があまりないという点です。この点に関しては、一つ目の内容ともつながってきます。物語的文章の構造については、読書以外でもテレビのドラマ等で日々接する機会は多いと思います。換言すれば、どのようなドラマであっても骨格としての構造となるストーリーがあり、視聴者はそれを追いかけていけば事足りるのです。その間、視聴者は主役の演技やラストシーンに対して感動したり共感したりといった心の動きを体験しますが、これは端的にいえばそのまま物語的文章の練習になっているのです。もちろん、映像と音声で伝えるテレビと物語的文章それ自体とは違いますが、ことストーリーを追いかけて感動を体験する思考過程は両者の共通点でしょう。物語的文章を読み解くには、この感動が大きな助けになります。この点では漫画本の一つも物語を形成している作品であれば、やはりドラマと同様の効果を期待できるでしょう。一口に漫画あるいは劇画といってもバカにできない作品もあり、その中には世代を越えて読み継がれる名作もあるのですから。

しかしながら、説明的文章に関しては前述のような日常的な出会いはほとんどありません。再びテレビを話題にいたしますが、いわゆる「謎解き番組」やドキメンタリー番組はこれに近いともいえます。そこでは、論理的な思考や実証的な探求が行われて、視聴者に考えさせる場面もあります。しかし、それでも生徒諸君が試験問題で接する論説文とは比較できないほど、レベルは低くなっています。それは当然と言えば当然であって、レベルを高くすれば視聴率が下がるからです。所詮はテレビなのです。

第三に、論説文は扱われている分野が多岐にわたっているという点です。この点に関しては、私が最初に「論説文とは、筆者が自己の意見を、様々な説明をしながら時には具体例を引いて主張している文章」であると述べたことを想起してください。問題は、その分野です。例えば、生徒諸君が試験問題中の論説文を見たとき、自分の好きな分野について書かれたものであるならば、きっと読みやすいでしょうし、高得点も期待できます。でも、その逆であれば、文章を見た時点で嫌気がさす可能性もあります。これが物語的文章であれば取りあえずストーリーを追いかけていけば何とかなると思います。これは前述のように私たちは平素においてドラマや漫画等で物語的構造に慣れているからこそできるのです。だが、これが論説文ではその構造に対する慣れがないので、生徒諸君が先に進めない場合も十分生じます。

以上のように、論説文の構造については、物語的文章とはかなり違っており、さらに平生論説文的な思考に接する機会にも恵まれない点を理解できたことと思います。そこで、重要になってくるのが読書なのです。すなわち、論説文に強くなるためには、論説文を読まなければならないのです。具体的には、論説文を扱った本を読んでいく必要が是非ともあります。

(3)論説文にも、実は「感動」がある

先に私は、物語的文章における「感動」について述べました。しかし実は、論説文にも「感動」はあるのです。それは、論証部分を経て結論に達するまでの過程の一部あるいは全部が理解できたときです。この点に関して私は、「与えられた文章(本文)を100%理解する必要はない」旨をすでに述べました。よって、与えられた論説文の一部でも理解できれば、健全な理性的判断のできる生徒諸君であれば感動はできるのです。それは、「あっなるほど、そうなんだ!」「勉強になったな!」などといった感動であり、理性的な感動です。例えていえば、算数・数学の難問が解けたときの感動と似ています。

しかし、これがなかなか難しいのです。算数・数学の問題では、いかに難度の高いものであっても、予め決められた条件が必ずあります。条件といってわかりにくければ公式や解法です。また、いかに長い文章題であっても、400字詰原稿用紙1枚分もないでしょう。ところが、論説文では、そうはいきません。扱われる分野は前述のごとく多岐にわたり、その中で論説文の筆者は自己の主張を縦横無尽に行い、多面的な角度から論証を操ります。もちろん、そこには再三述べているように理性的な論証の流れはありますが、文章全体が長くなってきた場合にはうんざりしてしまします。例えば、小学生段階においても浜学園の公開模試で与えられる論説文は、かなり長いようです。

では、どうすればよいのでしょうか。それは、やはり平素から論説文に慣れていくしかなく、そのためには論説文を扱った本をたくさん、かつコンスタントに読んでいくしかないということになります。それでは、その論説文を得意にするための読書の方法については、次回において詳しく説明していきます。

ありがとうございました。
次回も楽しみにしています!

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