論説文を初等教育段階から得意にしていく方法 (7)


~その7:「要点のつかみ方」を学ぶ(その4)~

今回もしっかり学びますよ!

(1)センター形式等で一般化されている、正しい選択肢を見つける問題

前回は「要点をつかむ」というテーマについては“一休み”して、「論説文問題における本文の内容を100%理解する必要は決してない」という点に関して説明いたしました。そして、「完璧主義から要点主義」への割り切りが論説文を得意にしていく、という結論に達しました。

そこで再び要点をつかむ方法について述べていきたいと思いますが、今回は要点を捉えるにあたって、選択肢が与えられている択一式の問題を検討していきましょう。このような発問形態は、いわゆるセンター入試をはじめとして広く入試問題全般や公務員試験等の問題に出題されています。

それでは、まず以下の文章と5つの選択肢を見てみましょう。この5つの選択肢のうちで、本文の趣旨(要点)を選ぶ問題です。

 

【文章】

常識とは何か。(1)

一口にいって、それは狂信に導かれない力だと思う。

狂信は宗教的狂信のみを示さない。その拡大解釈版に政治的戦闘的狂信がある。時には平和的狂信や民主的狂信もあるかもしれない。

とりわけ(2)近代化以降、様々な狂信が去っては来たり、来っては去った。それらは必ずしも熱狂的に語られ、暴力的に押しつけられるのではなかった。多くは真面目に、また静かに語られ、世論の形を装って、ほとんど自発的に出現するように見えた。狂信は戦前の特産物などとはいえない。戦後はそれが小型化し、耳に響きがよくなった分だけ、人々の間に浸透しやすくなった。

しかし(3)、個性的だという信仰には少なからぬ罪がある。普通であることの姿、つまり社会の重心たるモラルが定まらないというのに、いったいどこに個性の根拠が求められるだろう。単なる奇矯さや虚ろな自己主張を援用して頑固に言い張るしか道はない。

文章を書くという作業(4)は、狂信の流れから身を避けるのによい契機となる。何かを書いている(5)うち、やがて自分の姿も考えも、自ずと相対化(6)されてしまう。狂信を長く書き連ねる(7)のは苦痛である。というより、ばかばかしくなる。過剰に未熟か過剰にたくましい人でない限り、このことは有効だ。そして、「相対化(8)」の果ての「常識」から、いつか「個性」や新しい考え方が導かれてくる。導かれざるをえない。

(出典:関川夏央「常識」『日本の名随筆別巻76より一部改)

【選択肢】

1.個性的であれという風潮にも奇矯さや頑固さが伴っているのだから、時代の風潮や、それが昂じた信仰や狂信には十分に留意する必要がある。

2.現代は熱狂的な狂信社会といえるが、そもそも個々人にはその狂信に導かれない常識という力が備わっているはずである。

3.ばかばかしい狂信にとらわれないためにも、自己の持つ常識を相対化し、自己本来の個性が発揮できる、書くという作業を提案したい。

4.文章を書いて自己を相対化する作業によって、今の世の中にはびこっている狂信に抗う力が身につき、そこから個性も生まれてくるものである。

5.常識は決して個性や新しい考えと対極にあるものではなく、常識を狂信的に書き連ねる苦痛を経れば、個性や新しい考えが自ずと生じるものである。

(東京アカデミー編『オープンセサミシリーズ 公務員3 文章理解・国語・文学・芸術』より)

(2)キーワード・キーフレーズから正しい選択肢を見つける

いかがですか。今回の文章は、比較的簡単ではないでしょうか。この文章では、下線部(1)が問題提起です。つまり、この文章では「常識」というキーワードが最初に提示されています。そして、この問題提起に対して、常識とは「狂信に導かれない力」であると筆者は述べています。ここに、もう一つのキーワードである「狂信」なる語句も登場しています。

また、下線部(2)の「とりわけ」を含む段落は「ただの例」であると考えて、軽く流して読んでいきましょう。さらに下線部(3)では、再三述べた「強調の逆接」である「しかし」も登場しています。「しかし」に注目してこの段落を読み進めてみると、どうやらここでは「個性的」という点に関して、筆者は疑いの目を向けていることがわかります。すなわち、モラルが定まらないのに、個性の存立根拠などは到底求められない旨が述べられています。では、どうすれば常識を捉え、かつ個性を導けばよいのか。この点に関して筆者は、最後の段落で結論を述べています。

ここで筆者は、初めて下線部(4)のように、「書くという作業」に触れています。そこで、この段落において大切な点は、これも前回までに再三説明したキーワード・キーフレーズを捉えることです。下線部(4)・(5)・(7)に注目してください。ここでは、「書く」関連のキーワード・キーフレーズが出ています。次に、下線部(6)・(8)にも注意しましょう。これもキーワード・キーフレーズと判断してよいでしょう。なぜならば、結論としての最後の段落において、2回以上も同じかもしくは類似した語句や表現が登場した場合、これは非常に筆者が重視しているキーワード・キーフレーズと考えられるからです。

すなわち、筆者は狂信の流れに抵抗する方途として「文章を書く」という営みを挙げています。「書く」ことによって自己の常識や狂信を「相対化」し、狂信に抗う力である「常識」を見極めてこそ、「個性」や新しい考え方も導出してくる点を、結論として述べているのです。 

以上のような観点から選択肢を検討してみます。まず、1及び2は選択肢としては、すぐに削除されます。なぜならば、これら2つの選択肢には、筆者が結論部分において重視した「書く」関連及び「相対化」というキーワード・キーフレーズにまったく触れてないからです。要点を述べた選択肢を選ぶのですから、キーワード・キーフレーズが皆無であるものなど、最初から“門前払い”してよいと考えられます。また、同様にして、選択肢5もまた「相対化」というキーワードを含んでいません。よって、これも門前払いです。しかも、この選択肢では、「常識を狂信的に書き連ねる苦痛を経れば」といった筆者の主張と正反対の内容となっています。筆者は、「狂信を長く書き連ねるのは苦痛である。というより、ばかばかしくなる」と明言しているのです。

そうなってくると、結局は選択肢としては、3と4だけが残ります。この両者とも、キーワード・キーフレーズを具備しています。しかしながら、3では、「自己本来の個性が発揮できる」と述べている点が本文の内容と相違しています。筆者は、「本来の個性」とまでは述べていません。これは、論理の飛躍であり拡大解釈であるといえます。すなわち、「言い過ぎ」の選択肢であると考えられるでしょう。したがって、この設問の正解は選択肢4となります。

(3)キーワード・キーフレーズを論説文読解に使う意義

それでは、幾度も述べてきたキーワード・キーフレーズを論説文読解に使う意義について、最後にまとめておきましょう。この点に関しては、私は次の3点を強調しておきます。

キーワード・キーフレーズを論説文の文章中から拾っていくという作業を行えば、そのまま要点と繋がりのある重要語句や表現をつかむことができます。それは、文章が長くなっても、否、長ければ長いほどキーワード・キーフレーズの頻出度は高くなりますから、文章を読み解く中で傍線やアンダーラインでも引きながら内容を把握できるでしょう。それは、センター入試等のとても長い文章の読解に必ず役立ちます。いわば、長い文章という“大海”を前にして戸惑うことなく船を進めていける“灯台”の役割となってくれること請け合いです。

キーワード・キーフレーズを論説文の文章中から捜していくという作業を行えば、難解な文章が与えられたとしても要点を把握しやすくなります。難解な文章に関しては、前回において“一休み”として既に「論説文問題における本文の内容を100%理解する必要は決してない」という点に関して説明いたしました。しかしながら、そうはいっても多くの方は、いざ試験問題の一部である論説文を見た際には、どうしても「内容を完璧に理解しなければならない」という強迫観念にとらわれてしまうのではないでしょうか。その点で、私が縷々述べてきたキーワード・キーフレーズの追跡作業をしっかりと行えば、とにもかくにも要点を捉えることはできます。こう考えれば、受験者の肩の荷がかなり下りるのではないでしょうか。

キーワード・キーフレーズを論説文の文章中から見出していくという作業を行えば、論説文においてよく登場する重要語句を覚えることができるようになります。例えば、今回の課題文では「相対化」という語句を、私はキーワードとして取り上げました。「相対化」とは一般的に、「一面的な視点やものの見方を、それが唯一絶対ではないという状態に見なしたり、提示したりすること」というほどの意味です。この語句は、学問的な主義主張や、特定の事件などの報道のされ方などについての表現の際に使われる場合が多いようです。ここで「学問的な主義主張や、特定の事件などの報道のされ方」において、この「相対化」なる語句が使われるということは、いうまでもなく論説文でも使用される状況を意味しています。むろん、「相対化」はほんの一例にすぎませんが、キーワード・キーフレーズにチェックを入れることを行っていけば、このような「試験によく出る語句」も自然にマスターできるのです。これは、与えられた文章全体における要点をつかむとともに出題傾向を把握できるという、一挙両得ではないでしょうか。

それでは、次回は「要点のつかみ方」のまとめを行い次のステップへの準備を行っていきましょう。

どうもありがとうございました!
次回は「要点のつかみ方」のまとめをチェックしましょう!

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