論説文を初等教育段階から得意にしていく方法 (5)


~その5:「要点のつかみ方」を学ぶ(その2)~

前回の「要点を学ぶ」のその2です。
連載第五弾です!

(1)難度の高い文章を読む

前回は、実際の論説文を読んでみて、その「要点のつかみ方」について述べました。その中で私は、要点を捉えるには特に「接続表現」に注意することと、「例」は軽く流して読むことに関して書きました。そこで今回は、これらの諸点を踏まえた上で、さらに難度の高い文章を読んで要点を捉える練習をしていきましょう。それでは、まず以下の文章を読んでみてください。
  
【文章】
千変万化しすべてが移ろいゆく現世にあって、何か不変なもの、永遠なものを求める心情は古今東西に普遍的なことである。
特に(1)近代国家と科学技術に基礎をおく産業社会の中では制度や価値観は相対化され、変化が激しく、個人の生涯のうちでさえ大きく変貌するようになった。こうなるとあれこれの事物はみな不変の対象ではありえない。こういう筋書き(2)の中で、揺らぐことのない価値を帯びたように見える科学に熱い視線が集まる(3)という状況にあると思う。
確かに(4)、存在度の増大で数々の社会問題を起こしてイメージダウンの一面もある(5)、物理学の基礎にある理論体系や概念の堅さというものは不変のメタファーとしては当代随一といってよいだろう。そこに高い精神性のオーラがたちこめる。したがって近代科学の絶対性などがいかに批判されようと、人々の不変を求める深い心情が託す具体的な人間の営みが他にない現状では、科学がそうした精神性に応える対象になることは必然である。したがって(6)近代科学の絶対性批判はますます科学の永遠性に人々を吸い寄せる、という逆説的ダイナミズムにも着目する必要があろう。

永遠のメタファーとしての科学は、もちろん(7)永遠なものとしての自然のメタファー(8)と重なり合っている。近代産業社会での人々の疲れからか、身の回りの自然への関心が回帰しているといわれている。環境問題、野山の動植物観察、愛玩動物飼育、珍しい風景、子ども・子孫、ともかく高齢化社会や労働時間の短縮などもろもろの社会状況の変化と相まって、この傾向は確実なものとなっている。安らぎと安定を指向して一種の永遠性を求める心情(9)と関連があると想像する。そこで(10)、次に問題になるのは自然と科学の関連である。この関わり方の多様さが科学内部での幅広い分野、方法、価値観の源泉になっている。したがって、この問題で科学をひとまとめにして論ずるのは意味がないであろう。ただ、科学の体系は何らかの意味で相互に関連しているから、例えば人々の身近な植物への知識欲が一見無関係な理論物理学に遠いところで関係しているかもしれない。したがって(11)直接の接点は分野によって大きく異なるであろうが、科学全体が注意をはらうべき問題であると思う。(出典:佐藤文隆『科学と幸福』)

このように、かなり難しい文章であり、その内容もさることながら使われている語句も難度の高いものです。そこで、ここで先にこの文章内容の要約を簡単にしていきましょう。

では、千変万化する現世、特に変化が激しい近代産業社会の中だからこそ、人々は永遠不変に揺らぐことのない価値を「科学」に求めているという点を述べています。そしてでは、人々は「科学」のみならず「自然」にも永遠性を求めており、しかもこの二つは重なり合っているため、科学は自然との接点を注意すべき問題と捉え、両者の関連を追究していかなければならない、と主張しています。 

(2)段落における「要点のつかみ方」

まず、段落から検討していきましょう。では既におわかりのように、下線部(1)の「特に」という表現に注意しなければなりません。それは、この表現に筆者の強調すべき意識が込められていると考えられるからです。そして、さらに読み進んでみると、下線部(2)の「こういう筋書きの中で」といった「まとめ」を表す記述が見て取れます。そして、下線部(3)の「科学に熱い視線が集まる」という筆者の一つの「主張」へと読者を導いています。

しかしながら、この段落における注意点はもう一つあります。それは、いうまでもなく下線部(4)~同(5)における「確かに~が」の表現です。この点については前回触れました、「もちろん~しかし」の構文と同じです。「もちろん」は、一度相手に譲歩してから自己主張をする場合に多く用いられます。(4)の「が」は逆接を表す接続助詞です。ゆえに、この部分もまた、「確かに」を用いて一歩譲りながらも逆説の強調を使って、「物理学」の例を出し自説を補強して説得力の高いものにしようという、筆者の意図が読み取れます。そして、下線部(6)の「したがって」を用いてにおける結論を導いていると考えられます。 

(3)段落における「要点のつかみ方」

次の段落では、「科学と自然の重なり」に関して述べています。それは、科学も自然も「永遠なもの」であるという共通項があるためであるとして、論を展開しています。ここで注意すべき接続表現は、やはり下線部(7)の「もちろん」です。そして、この後で筆者は下線部(8)の「永遠なものとしての自然のメタファー」との重なりについて、環境問題等の「例」を挙げて産業社会における疲労と自然への回帰の関心について述べています。そして、さらに下線部(10)「そこで」を使って「自然と科学の関連」の重要性について触れ、下線部(11)の「したがって」を用いてにおける結論を導いていると考えられます。

以上のように、 という両段落の要点把握では、ほとんどにおいて前回より強調してきた接続表現に頼るケースが多いということがわかります。しかし、今回はもう一つの要点把握の方法も述べておきましょう。

(4)キーワードとキーフレーズで要点を捉える

ここで要点を読み取るに際して重視すべき点は、繰り返し登場する同義(同じ意味)の表現です。これを一応、単純にキーワードもしくはキーフレーズといっておきましょう。例えば本文中においては、「不変なもの、永遠なものを求める」「不変のメタファー」「不変を求める深い心情」等々の「不変を求める」云々の表現が頻出しています。また、いずれにも「不変」の語が入っています。では、なぜ筆者はこのような同義の表現を多用するのでしょうか。それは当然、同義の表現が筆者の最も重視する意味内容であり、すなわち要点だからです。このように考えると、これらのキーワード・キーフレーズに気づくことも要点を捉える場合において大いに役立ちます。

この点に関しては、他にもキーワード・キーフレーズの使用を挙げることができます。例えば、「永遠のメタファーとしての科学」が「不変の科学」を意味すると考えれば、やはりここでもキーワード・キーフレーズは連続していると思われます。「永遠」と「不変」は非常に近い意味の語句であると考えられるからです。そこで、もう少しこの段落を読んでいくと、下線部(9)の「一種の永遠性を求める心情」なる表現を見出すことができます。ここでもキーワード・キーフレーズの連続性は明らかです。

このように考えれば、「カタイ」文章であり、かつある程度の長さのある文章であるとしても、前述のように接続表現に留意しつつ、キーワードにも着目して読み込んで行けば、ほとんどの文章の要点をつかむことが容易にできるのではないでしょうか。
もちろん、ここで初歩的なことですが、与えられた文章の最初と最後はしっかりと読んでおく必要があります。この文章では、「千変万化しすべてが移ろいゆく現世にあって、何か不変なもの、永遠なものを求める心情は古今東西に普遍的なことである」と説く冒頭の一文は、きわめて重要です。いわば、文章全体の内容を、筆者はこの一句に集約しているといえるでしょう。

以上のように今回、私は要点のつかみ方について、接続表現に加えてキーワード・キーフレーズに着目することの大切さを述べてきました。次回もまた比較的難度の高い文章を扱いながら、別の「要点のつかみ方」も入れて「初等教育から論説文を得意にしていく方法」に関して述べてみたいと思います。

ありがとうございました。
次回も楽しみにしています!

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